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執筆者の写真学生応援団

約100大学による長編オムニバス映画 監督インタビュー

更新日:2020年9月18日

今回は「コロナ世代、映画で闘う。」という強いメッセージを掲げた全国の大学生による長編オムニバス映画、『突然失礼致します!』より、7名の監督にインタビューを行いました。


全国の大学生が外出自粛期間中に1分以内の映像作品を制作し、3時間を超える一本の長編映画を制作。室内という環境条件を駆使し、「希望」というテーマと共に、学生たちが作り出す大作はYouTubeにて公開中です。(最後のリンクからぜひご覧ください。)


約100大学、約120団体 作品数は180本。壮大な企画です。学生パワー恐るべし!

インタビュー後にもう一度監督たちの作品を鑑賞したのですが、面白さが桁違いに変わります。監督ごとに異なる強い思いがギュッと詰まった作品ばかり。1分という短さに彼らの魂が籠もっています。インタビューぜひチェックしてからご鑑賞ください!


田巻監督 東京都立大学・映画サークルKINO

(YouTube 1:24:56、タイトル『1000』)

栃木県出身。東京都八王子市在住。 人文社会学部人文学科在籍。 大学1年生。この春に大学に入学した。 作品では監督、脚本、編集を担当 ゴダールの「さらば、愛の言葉よ」、寺山修司の「田園に死す」を敬愛。

① 参加を呼びかけられたときどのように感じましたか?

自分がこのコロナ社会の中で作りたかった「希望」というテーマでの撮影ということでとても魅力的に感じました。また、自分自身が1年生なのでチャンスとしても捉えました。


② 撮影環境に限りがありましたが、どのような工夫を凝らしましたか?この状況を逆手にとって、良かった点はありますか?

コロナ禍で大学に行けず、新入生ということもありサークルの撮影機材が使えませんでした。そのためiPhoneを使っての撮影を行いました。一見チープな映像ですが、日常の中をとるのに良い機材だなと思いました。これにより誰かの生活を盗み見ているような感覚を表現できたと思います。

こういった普段ではすることのなかった撮影技法を用いられたことが面白かったです。


③ 作品の見どころを教えてください。

他の作品とは被らない「希望」というのが見どころです。

「希望」というテーマはどの大学も同じですが、その中でも被ることがないように現時点での希望を問うとともに1000年後に今の状況を伝える、アーカイブとしての希望をテーマとして作りました。また、1分という短い時間の作品のため、コラージュ的な作品にしました。


④ 学生だからこそ持ちえる映画の力は何だと思いますか?

VODが発達していく中で、高予算をかけたプロフェッショナルな作品にはできない、社会に対する鋭い視点を用いた作品制作は学生の強みだと思います。また簡単に集まって情報を共有し合いながら作っていけることや、同年代だからこそ集まったこの企画が生まれたのことにおいても同じことが言えます。


⑤ あなたの作品を通して捉えた「希望」とは何ですか?

「希望」は本来ならば身近な形で触れられる題材ですが、今まで本質を真剣に考えたことはありませんでした。そんな反省も今回の作品を通して感じました。日常の世界における希望は「幸福」に近いものがあると思いますが、それだけではなく、現実と虚構の間にある様な難しいものだとも感じます。だからこそ自分の中で捉えた希望というテーマは「ずっと考えなくてはならないもの」だと思いました。


 

板橋千歳監督 東洋大学・映像サークルpartyc. 

(YouTube 1:12:21、タイトル『うちの旅』)


2000年生まれ。千葉県出身。 国際観光学部国際観光学科在籍。 東洋大学映像サークルparty c.代表。

① 参加を呼びかけられたときどのように感じましたか?

新入生の勧誘期間ということもあり最初は見送らせていただきましたが、何度もお声掛けを頂き、すごい熱意のある企画なのだなと感じました。また、それと同時に他の団体さんとの交流や作品など自分たちの刺激になり成長する機会であるとも感じました。

② 撮影環境に限りがありましたが、どのような工夫を凝らしましたか?

この状況を逆手にとって、良かった点はありますか?

今まで外に焦点を当てた作品が多かったのですが、撮影が屋内に限定されていたため、家の中にいても外に居るような感覚を味わえる作品にしようと考えて作品を撮りました。この状況のおかげで、屋内でできる撮影の可能性が広がりました。


③ 作品の見どころを教えてください。

YouTubeで公開するため老若男女問わず観られるような優しい作品を撮りました。そのため深いことを伝えるのではなく端的なことに絞り、ありきたりな日常の中の「希望」に焦点を当てた作品です。


④ 学生だからこそ持ちえる映画の力は何だと思いますか?

プロや大人には持ちえないフレッシュさや、しがらみがないところ。自分勝手に好きなものを作れるところが学生が持ちえる映画の力だと思います。


⑤あなたの作品を通して捉えた「希望」とは何ですか?

希望は暖かいものであると同時に、漢字が2つとも「のぞむ」と読むことができる為、欲望の面も持ち合わせていると感じました。コロナ禍で私たちが「のぞむ」当たり前にあった、ありきたりな日常こそが希望だと思います。


 

渡邉雅也監督 東海⼤学・望星会CINEMA AVENUE

(YouTube 1:14:31、タイトル『自問自答』)


神奈川県秦野市在住。 大学2年生。文化社会学部心理・社会学科在籍。 上記団体で部長を務める。

① 参加を呼び掛けられた時どのように感じましたか?

大学でサークル活動が何もできなくなり困っていた最中にオファーを頂きました。200の大学が集まる中で作品を出品できるのは絶好の機会だと思い、大学に無理を⾔って参加できるよう交渉しました。


② 撮影環境に限りがありましたが、どのような工夫を凝らしましたか?この状況を逆手にとって、良かった点はありますか?

2人以上の登場人物を出すことができなかったため、自分の部屋を舞台に、自分が2人出てくるような演出にして工夫を凝らしました。


③ 作品の見どころを教えてください。

希望というテーマに対してどのように向き合うべきだろうかと、思ったときの様子をそのまま映像化した作品です。2人の自分の他愛のない会話をシュールな映像とともに楽しんでいただきたいです。


④ 学生だからこそ持ちえる映画の力は何だと思いますか?

利益を度外視して制限など何もなく、情熱をもって純粋に作りたいものを作り、意思表現することが出来るのが学生映画の力だと思います。若いエネルギー、情熱も強みですね。


⑤ あなたの作品を通して捉えた「希望」とは何ですか?

「希望」とは曖昧な⾔葉であり、明確に定義付けできるものではないと思います。しかし答えを出そうと常に考えること⾃体が大切で、その行為そのものが希望の本質に近づけるのではないかと思いました。


 

川島藍丸監督 武蔵野⼤学・映画研究倶楽部

(YouTube 1:56:03、タイトル『コーヒー』)


静岡県出身。 大学3年生。人間科学科に在籍し、心理学を専攻している。 大学1年から2年間サークルの部長を務め、廃部寸前の状態から現在26名が参加するサークルへと成長させる。

① 参加を呼び掛けられた時どのように感じましたか?

声を掛けていただいたときは企画の初期段階で、このような大きな企画になるとは思っていませんでした。コロナ禍でサークル活動ができない中やることが見え、また大きな企画になったため、参加してよかったと思いました。


② 撮影環境に限りがありましたが、どのような工夫を凝らしましたか?この状況を逆手にとって、良かった点はありますか?

⼤学に⾏けず、編集機材がなく苦労しました。リモートで代理編集していただけて有難かったです。この企画を⽪切りに、リモートでの上映会開催などサークルの活性化のきっかけにもなりました。


③ 作品の見どころを教えてください。

オムニバス作品ということで、同じ大学の(別作品を出品している)後輩と脚本の調整をして関連付けた作品を作りました。「あ!繋がっている!」と気づけて頂けると更に面白くなる作品です。


④ 学生だからこそ持ちえる映画の力は何だと思いますか?

王道なストーリーや撮影技法を外せることや、失敗を気にせず実験的、試験的な作品制作が学生の強みだと思います。


⑤ あなたの作品を通して捉えた「希望」とは何ですか?

「希望」とは「希な望み」と書くため、実現可能性は低いけれど、その実現を望むことです。そんな可能性をあえて抑制してしまっている意地やプライドに焦点を当てた作品となっています。自分がかけてしまっているブレーキへの問題提起が作品を通して伝わると嬉しいです。


 

永友悠稀監督 横浜国立大学

(YouTube 1:59:19、タイトル『This is (our) hope.』)


映画制作から脚本や小説の執筆、音楽活動など幅広く藝術活動を行う自称アーティスト。 近年では「都市文化祭」なるイベントを企画・主催するなど、ある種の万屋と化している。別名・Archer。

①参加を呼び掛けられた時どのように感じましたか?

今まで呼びかけることの方が多かったのですが、今回珍しく声をかけていただいたので、精一杯貢献したいなと感じました。その結果、非常に大きく素晴らしい企画となり、参加して良かったなと感じました。


②撮影環境に限りがありましたが、どのような工夫を凝らしましたか?この状況を逆手にとって、良かった点はありますか?

 機材の都合でiPhoneを使って撮影したので、アプリで美肌加工するなど工夫と試行錯誤がありました(笑)。

 テーマの希望がどうあることができるのか。という点で、身近な希望のあり方を描くことができたと思います。普段はオファーがなかなか出来ない人にオファーでき、結果として普段であれば撮ることができないような画が撮れたので非常に良かったです。


③作品の見どころを教えてください。

私が制作した作品は一切セリフがなく、色々な読み取り方、受け取り方ができる作品にしました。作品のしなやかなあり方そのものがテーマである希望に繋がる意味を有しています。多層性・多義性のある作品になっていますので、作品の存在そのものが見どころといえます。


④学生だからこそ持ちえる映画の力は何だと思いますか?

やはり「学生による」というフレーズがつくことで多くの人に注目してもらえますし、実験的な映画や芸術的な映画を含めて自由に作りたいものを作れる。「大人なんて」「社会なんて」など、大人になるとなかなか言えないですし、"やったもの勝ち"というのは非常に魅力的です。


⑤あなたの作品を通して捉えた「希望」とは何ですか?

制作者である私がそれを語ってしまうと、作品が持っている「希望」が失われてしまいかねないので、ぜひご鑑賞いただいた皆様に感じていただきたく思います。キーワードは「生生流転」、「力戦奮闘」、「多様性・多層性・多義性」です。


 

ナス監督 国際基督教大学・映画部きらきら星 

(YouTube 2:30:11、タイトル『珈琲』)


好きな映画: 静かな映画 (小津安二郎映画、善き人のためのソナタ、あなたを想う、など)

① 参加を呼び掛けられた時どのように感じましたか?

新入生を勧誘や映画鑑賞会を開催しようとしていましたがコロナの影響でやはり作品を作ることが難しく、「作品を作りたいな」と思っていた時でした。また1分の映像という短さで、過去に撮影したことがなかったため挑戦であり、面白そうだと感じました。テーマである「希望」の解釈を様々な大学、団体から見られるというのはとてもいい機会でしたし、とても楽しかったです。


② 撮影環境に限りがありましたが、どのような工夫を凝らしましたか?この状況を逆手にとって、良かった点はありますか?

役者さん選びが結構難しくて、、、私は妹にお願いしました。顔を映して欲しくないということだったので、どうしたら顔以外で気持ちや思いを表現できるか試行錯誤しました。屋内での撮影を通して、何気に見ている自分の部屋をカメラを通して見ると、全然違って。改めて自分のまわりにはこんなにたくさんの綺麗な絵が溢れていたんだなと感動しました。


③ 作品の見どころを教えてください。

日常的な希望をテーマにしました。珈琲は私にとって大切なもので、希望と言えるのではないかと感じたので、最初のシーンに、自分なりの珈琲の定義を辞書のように載せました。ぜひ注目していただきたいです。


④ 学生だからこそ持ちえる映画の力は何だと思いますか?

学生は社会人に比べて未来に対して不安定なところがあると思います。学生独特な悩みや葛藤、そんな荒さや尖った部分が学生にしか出せない味で魅力だと感じます。


⑤ あなたの作品を通して捉えた「希望」とは何ですか?

私にとって希望というのは、生きる原動力、なぜ頑張るのかと言う理由だと思います。 でもそれは夢とかそんな大きなものではなく、結構小さいもので良くて、例えばこの課題が終われば今日のご飯が美味しいとか今日のコーヒーがうまいとか、そんな小さいことが積み重なって自分の生きる理由になるのかなと思います。人にとっては何でもないものでも、自分にとってはそれが幸福であり、存在するだけで頑張れる。そんな小さな希望を今回描きました。


 

廣瀬瑛登監督 一橋大学・津田塾大学映創会

(YouTube 2:44:26、タイトル『どう想うかい』)

大学1年生。社会学部在籍。 今年春に奈良から上京。 好きな映画は『最強のふたり』『ラ・ラ・ランド』『プリズンサークル』など。

① 参加を呼び掛けられた時どのように感じましたか?

春に入学したばかりだったので、先輩と親睦を深められなかったり、活動もできない状態でしたが、この企画を機会に先輩に手伝っていただいたり、同級生とのコミュニケーションをとることができ、とてもいいお話をいただけたなと思いました。


② 撮影環境に限りがありましたが、どのような工夫を凝らしましたか?この状況を逆手にとって、良かった点はありますか?

高校時代に屋内かつ1人で撮影する機会が多くあったため、難点はあまり感じませんでした。しかしZOOMをしようした撮影は挑戦でした。この企画を通して高校時代に1人で撮影していたストップモーションムービーに他の人からの意見を取り入れたことで発展させることができました。


③ 作品の見どころを教えてください。

見どころはZOOMで同窓会を開いているシーンです。思い出や記憶は時間が経つにつれて忘れていくからこそ過去に諦めをつけて次に進めます。それもある種、希望の一つのあり方なのではないかと思い、映像化しました。コロナ禍においても諦め、乗り越え、進んでいくという重なりがありますのでぜひ見ていただきたいです。


④ 学生だからこそ持ちえる映画の力は何だと思いますか?

初めての経験、初めての出会い、環境が大人よりも多くあるからこそ、それを新鮮な状態のまま作品に落とし込めることが学生ならではの魅力だと思います。


⑤ あなたの作品を通して捉えた「希望」とは何ですか?

人は希望をなくしては生きていけないと思うんです。今月ライブがあるとか、そんな身近な楽しみがあるからこそ頑張れる。そんなものを探しながら人は生きていくのではないかなと思います。コロナという非常事態の中で何か諦めなければいけない状況においても、希望を探していく。そんな思いを込めた希望を描きました。

 

加藤聖士監督 日本大学文理学部・映画研究会

(YouTube 2:35:37、タイトル『妄想/現実』)


東京都出身。 大学3年生。社会学科在籍。 好きな映画は『時計じかけのオレンジ』『CURE』など。

① 参加を呼び掛けられた時どのように感じましたか?

サークルの活動が止まっていいた状態の中で、どうしようかと悩んでいた時に声をかけていただいたのですごく嬉しかったです。オンライン環境やSNSにも力を入れるきっかけにもなり状況が好転する機会になりました。


② 撮影環境に限りがありましたが、どのような工夫を凝らしましたか?この状況を逆手にとって、良かった点はありますか?

今のコロナ禍の生活の中で使い始めたzoomを映像の中に取り入れたいと思いました。その際、上田慎一郎監督の『カメラを止めるな! リモート大作戦!』でリモート撮影のアイディアを取り入れました。また、4年生の先輩が忙しい時間を縫って出演してくださって、主演の単独撮影の時には、主演の方の親御さんが撮影を手伝ってくださったりと、色々な人の協力に恵まれました。


③ 作品の見どころを教えてください。

映画サークルとしての希望、初心証明というのをテーマに制作しました。今のコロナ禍でも出来るという『現実』の上で、映画で表現してみたいという『妄想』が成り立つようにと、映画の中で表現しようと思いました。また、1分という限られた時間の中で、ラストにどんでん返しを入れてみました。


④ 学生だからこそ持ちえる映画の力は何だと思いますか?

映画は一方的に伝達するメッセージであるため、人によって好き嫌いが出てきますが、その分好きな映画だと強く影響されるものではないのかなと思います。そんな映画になるようにと、観てくださった方の一部に少しでもなれたらいいなと思います。


⑤ あなたの作品を通して捉えた「希望」とは何ですか?

希望とは自分が辛いときにこそ向き合う言葉で、幸せな状況では少し遠い存在だと感じます。そんな中、私にとっての「希望」は友人やサークル仲間と映画について語り合うことだったので、その様な場面を作品に盛り込みました。



 

いかがでしたでしょうか?

どの作品も監督も、多様性に溢れていてインタビューは本当に楽しかったです。

希望という言葉一つ取っても、解釈は全く異なります。

あなたにとっての「希望」とは何ですか?時代、世代と共に変わるからこそ今の希望とは何か考えることは現在の自分と向き合うこと。とても大切な時間だなと感じます。


次回はこの企画を呼び掛けた群馬大4年で映画部部長を務める熊谷宏彰さん、他の監督のインタビューを掲載予定です。

ぜひチェックしてください!!!


(執筆:りん)

(インタビュー:りん・みゆう・こうじ)





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